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前「日本時間栄養学会」会長 ご挨拶

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 平成26年に時間栄養科学研究会が発足し、5年間の経過中に学会化を目指す動きが加速し、2020年1月1日から、新しく「日本時間栄養学会」に移行することが決定しました。時計遺伝子の発見以来、体内時計の研究は盛んになってきています。体内時計の基本的機能を研究する時間生物学という研究領域が最初に立ち上がり、「日本時間生物学会」という学会があります。また、医療における治療にも時間生物の知識を応用すべく、「時間薬理学」が誕生し、薬物療法における、投薬時刻の重要性が認識されるようになりました。体内時計の制御を受けている遺伝子発現調節は多岐にわたりますが、エネルギーや栄養の吸収・代謝にかかわるものが多数発見されています。薬と同じように、食物・栄養や体内に取り込まれ生体と相互作用をし、機能を発揮するため、体内時計と食物・栄養は相互作用することが分かってきました。つまり、食や栄養を考えるときに、摂取時刻やタイミングといった「時間栄養学」の発想が重要になってきます。2015年版の「日本人の食事摂取基準」に初めて、時間栄養学的発想が総論に取り上げられました。また、生体における時間軸の重要性は栄養・食にとどまらず、運動や休息などにも応用可能であり、時間栄養学は、時間軸の健康科学の中心的存在です。

今日、少子高齢化社会の進展や食事の欧米化や多様化などにより、メタボリックシンドロームなど生活習慣病やストレス障害などが急増しています。一方、高齢者では食や栄養の過不足によりサルコべニア、運動機能障害などが多く見られるようになってきています。これによって、日常生活に制限を強いられる人々が増加し、生活の質(QOL)の低下につながっております。日常生活に制限のない期間(健康寿命)の伸長やQOLの向上といった観点が重要視されて「食による予防」や「運動による予防」が重要かつ緊急な課題となってきており、体内時計の研究・発展は多くの人の体と心の健康づくりに貢献するものと確信しております。

このような状況下で、時間栄養学の分野、時間運動学、時間休息学の分野を加速することにより、人々の健康と疾患予防に寄与するために、各分野の研究者が情報を活発に交換し、討議する場を提供することは必要不可欠であると考えます。目的達成のために、より広範な基礎研究の活性化、応用開発への問題点の検討などが必要であり、そのためには各分野の研究者、更には企業において直接応用開発に携わっている研究者の方々との緊密な連携が不可欠であります。種々の領域の研究者が率直に議論を重ね、国民全般に止まらず国際的にも評価される研究成果をまとめ、すべての方々の役に立つような利用を図ることを目指して努力することは、きわめて意義深く、研究者の社会に対する要請であると固く信じております。さらにそれらの情報を広く、深く、十分に理解をして頂くためにも信頼ある情報発信を実施していくことが必要です。

 このような状況下において、幹事の先生方と相談し「時間栄養科学研究会」を設立しましたが、今回の日本時間栄養学会においては、選挙権・被選挙権を明確化し、任期も定めるなど、学会の会則が整いました。皆様におかれましては、「日本時間栄養学会」にご賛同いただき、ご入会していただきたくよろしくお願い申し上げます。

 

平成26年11月

   「時間栄養科学研究会」 設立発起人 代表

早稲田大学 柴田重信

2019年8月

「日本時間栄養学会」会長

早稲田大学 柴田重信

 

 

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